このようにして1番目、2番目、3番目、4番目、7番目のカテゴリーの仕組み作りを急がば回れで行っていくと、必然的に5番目のカテゴリーの人のやる気が高まってくるのです。そうすれば6番目のカテゴリーであるプロセスの生産性も上がるのです。そしてお客様がお客様を連れてくるという現象が同時に生まれ、売上が上がり、更に利益は上がるという流れができあがります。
これが経営品質の基本的な考え方です。まさに自然の摂理に従った経営です。もともと日本経営品質賞の基になったアメリカの国家経営品質賞(マルコム・ボルドリッジ賞)は多額の国家予算を投じて、世界で永続して繁栄している会社を徹底的に調べ、その共通的な特徴を導き出し、全米中の企業にガイドラインを提供しました。良い経営をするためには何が重要なのか、その共通のポイントを明確にしているのです。それがこのアセスメント基準であり、8つのカテゴリーにしたがって経営をしていくことは、全世界共通の繁栄のための真理です。ちなみにピーター・ドラッカーのマネジメントという本の目次もほぼ同じです。
したがって、この自然の摂理に反して、従業員を使い捨てにしたり、お客様を騙したり、情報を隠したりしていては、その組織に永続的な繁栄などあるはずがないのです。
独自能力を向上させるためには3つの要素があります。
①技術面(商品)、②技能面(スキル)、③風土(自主性と創造性を育む仕組み)、の3要素です。
実際には①と②の二つだけでは永続性のある独自能力にはなりえません。商品は直ぐに他社に真似されますし、優秀な技能をもった熟練社員にしても、他社に引き抜かれたり、定年になったりしてしまえばそれでおしまいです。ですから差別化を考える上で一番重要なことは何かと言うと、三番目の風土なのです。
このことは他社がわかっていても真似ができません。実はここで差別化できない限りは、良い商品も良い技術も生まれないのではないかと思います。
金儲けだけでビジネスを考えることは組織が駄目になります。昨今の多くの不祥事を起こした会社や組織を見れば一目瞭然です。だからこそ企業経営においては金儲けという合理的動機だけでなく、道徳的動機(倫理や感謝)が必要であり、それがあってこそ顧客本位の経営は実現できうるのです。
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